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サンクトペテルブルグ/マリンスキー・オペラ2006日本公演
なぜ、ゲルギエフ/マリンスキーの「指環」が日本に来るのか、
その由来も知らずに、またムカデやサナギのような異様な
舞台背景のパンフレットにも違和感があったのですが、
ワンスポットだけでも観て置きたいと、東京文化会館の
「神々の黄昏」1/16を天上桟敷5階から俯瞰してきました。
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全体の印象は予想外に素晴らしく、指揮者ゲルギエフの
圧倒的な放射光の様な力で、楽団と日替りの無名な歌手団が
ひとつにまとめられ、圧倒されるできばえでした。
不気味な四体の巨像はアジア、コーカサスの伝説「ナルト」に
由来する造形で、知ってみると素朴な暖かさも感じます。
音楽(指揮ゲルギエフ)と、舞台美術(ツイーピン)が中心で
演出はゲルギエフ&ツイーピンの合議と、指揮者主導が明確に
あらわれています。(指揮者主導はカラヤン型)
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歌手は、No1の歌唱力よりも、見栄え、キャラクターを
役柄に合わせて日替りしていく、集団方式の様でした。
黒の衣装、剃り込みのあるモヒカン刈りのブリュンヒルデには
驚きましたが、「夜の女王」とも重なるイメージがありました。
解説によれば中国風の辮髪で、この日はアイーダ、トゥーランドット
路線の"オリガ・セルゲーエワ"(4人日替りのブリュンヒルデ)。
ジークフリートは黄昏らしく、やさしい童顔のヴィクター・リュック。
(ジークフリート・エルザレム似と言えなくもない。3人日替り)
役柄作りで気に入ったのは、エジプトのファラオの様に立派な
グンターと、長身細身のやさ男に見えて危険なハーゲンの組合せ。
それぞれの弱さと邪悪な内面は、顔の隈取りに隠されている。
グンターは、立派な声の巨漢エフゲニー・二キーチン。
(4部作前半でのウォータン、さすらい人路線の人)
ハーゲンは、ミハイル・ぺトレンコで、やや声に威圧感は無いが
悪知恵の働きそうな長身カマキリ男、イケメン・キャラクター。
(フンディンク、クリングゾル路線。)
(2人とも1973年と76年生まれの30歳そこそことは驚き)
グートルーネ役、ウァルトラウテ役は、破綻はないが普通の印象。
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特にオーケストラは、ゲルギエフがマリンスキー劇場の芸術監督に
就任した1988年からのつき合いで、ゲルギエフの楽団というべき
個性と一体感が発揮されていました。
舞台の進展と共に発揮される、管楽器、打楽器をベースに、
ブレンドされた、史上まれな位のパワフルさという印象は、
ゲルギエフの代名詞とも言え、当たり前の感想でしたが、
冒頭、序幕でのナイーブで透明感のある弦の印象と、フルート
など木管楽器の水しぶきを思わせるブリリアントなきらめきは、
意外な驚きでした。
ゲルギエフは、きめ細かさとダイナミックさを兼ね備えた
カリスマ指揮者であった、という印象を新たにしました。
(音色の総括)
*最初に感じるのがナイーブさ(弦楽器の繊細さと透明さ)
*楽曲の変化と共に感じるのがブリリアントさ(木管のきらきらした華やかさ)
*管、打のパワフルさ(肺活量に任せた金管のふてぶてしい迫力、打楽器の爆発)
*最後に、地の底を揺るがす様な原始的な合唱団の「婚礼の合唱」もロシアの
大地を思わせます。
それらが徹底的にコントロールされた形で提出されます。
例えば、全オケ出番のうなりを伴う雄弁なフォルテシモ爆発にも関わらず、
次の瞬間、歌手の声を浮き立たせ、絶妙に抑えた音量のコントロール。
これにより歌唱の巧みな会話を、次々とオケ演奏が強調し、瞬間瞬間の
場面の意図を強調できているため、極めて説得力を持った抑揚と立体感の
あるゲルギエフの指環(黄昏)が構築されました。
ハイライトは「ジークフリートの葬送行進曲」で、死者の船出とも
いうべき、古代エジプト風の小舟の棺を6人ほどで担い、左右に
揺れながら進む様式感のある葬列が舞台を一巡、二巡。
この間に万感こもって涙をそそる、ゲルギエフの仁王立ちから
落とす「ダン!ダン!!」。2人のティンパニー・ロールが、
これまで聞いたことのない程の音量で、これに応える。
かつて、これほど舞台と演奏が一体感を示した葬送行進曲の場が、
あったでしょうか。本当に目頭が熱くなりました。
中央に安置された小舟に横たわった遺体に、参列者が次々と手から
砂をそそぎ弔うしきたりも、お焼香や清めの塩を使う我々にどこか
似ていると思いました。 (追記「清め砂」は神社系にあり。)
エンディングの「ブリュンヒルデの自己犠牲」も破綻無く進み
筋通りブリュンヒルデは奥に飛び込み、災いの和音に送られ、
ハーゲンもまた渦に呑込まれ、愛の救済の動機と共に全てが
浄化され、静かに消えていきました。
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<ワーグナーとサンクトペテルブルグの背景>
1863年にサンクトペテルブルグとワーグナーの伝統が始まりました。
1863年にワーグナー自身による指環の一部とトリスタンと
イゾルデ前奏曲などがサンクトペテルブルグで指揮された。
1900年にマリンスキー劇場での「ワルキューレ」初演。
1901年に「ジークフリート」,1902年「黄昏」,1905年「ラインの黄金」。
1940年代以降、ワーグナーの音楽の上演禁止時代(ナチス台頭)
1988ゲルギエフ/マリンスキー劇場の芸術監督に就任
2000年に100年ぶりのリング復活上演が始まる。
2000年にゲルギエフ/マリンスキー「ラインの黄金」復活公演
2001年にゲルギエフ/マリンスキー「ワルキューレ」復活公演
2002年にゲルギエフ/マリンスキー「ジークフリート」
及び「神々の黄昏」復活公演
2004年にゲルギエフ/マリンスキー「ニーベルングの指環」(白夜祭)
・・・・・世界巡演・・・・
2006年1月ゲルギエフ/マリンスキー「ニーベルングの指環」(東京)
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全ては、ワーグナーに奉仕する、ゲルギエフの並外れた放射(オーラ)に
よって強烈に統率された演奏であり歌唱、演技であったこと。
アジア、アフリカ、古代エジプト風など非ヨーロッパ色が眩しい舞台。
ギービッヒ家兄弟の民族的ロングスカートも、あの「春の祭典」初演の
東方風衣装(ディアギレフのバレエ・リュス)に似ている様でもあり。
アジア・コーカサス色に染め上げられた特徴的な「指環」でありました。
あの無精ひげのCDには、ちょっと手が出ず殆ど聞いたことがなかった
のですが、今回は印象を改めました。(祖先は古代スキタイ人に連なる)
終演後にしばらく待って、目の前でマエストロにサインを貰うことが
できました。一瞬のサインの後、ニヤっと笑った無精ひげが印象的。
歴史は巡る。同じ会館裏口ロビーのサイン机で、バーンスタインに
サインを貰った日もあったことを思い出しました。
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