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小山由美「一世一代のフリッカ」

 投稿者:中Chan   投稿日:2008年 2月25日(月)00時21分55秒
  通報 編集済
  楽しみにしていた、飯守泰次郎指揮 楽劇「ワルキューレ」を、20年2月23日
(土)東京文化会館で、観ることができた。

見所は、沢山あったが、個人的に関心が強かったのは、第二幕。「ニーベルング
の指環」の一番重要な屋根の頂点、神々が没落に向う折り返し点、フリッカの
ウォータン糾弾の場面であった。

当日、この場ばかりは正に「小山由美の部屋」とでも称しても過言ではない。
小山由美は、歌手生活の総決算とも言うべき、正に満を持して一世一代のフリッカ
をここで演じ切ったのであった。ウォータン糾弾の場は以前から退屈な場といわれ
たが、1990年前後、ミュンヘン発のM.リポヴシェフのフリッカの名演が、
世界を目覚めさせた。

訊問裁判の小山由美の声は、いつもに増し、研ぎ澄まされた、シャープな切れ味を
示し、リポヴシェフを超えた徹底さで、辺りを睥睨して、机をたたき続け、ウォー
タン糾弾の手を最後まで緩めることはなかった。歌いきり、同時に、この役で
ワーグナー歌手として世に出たことに総決算の恩返しをしたと思う。フリッカ、
オルトルート、クンドリーと常に使い続けてくれた、指揮者、飯守泰次郎への
感謝の意を洗わす演技でもあったのではないだろうか。

新星演出家は、この場面をサポートし、また全面的に小山の部屋として任せたとも
考えられる。ひいきとして、ある種の追っかけとして、もちろん小山由美の公演日
を選んだとは言え、本当に良い日にめぐり合った。小山由美が命を懸けた名場面に
最大の拍手でその成功を祝いたい。

最後のフリッカからウォータンへのご褒美のキッスは、ぶっちぎりの糾弾ではない
との演出家の辻褄合わせだろうか。ここは演出家のがんばりかも。

 ★追記3/1:関連記事を見つけました。

 演出家ジョエル・ローウェルス(インタビュー)
 ─ヴォータンとフリッカの間に現在も愛情は存在しますか?
 (演):そう思いますし、そう思いたいです! それを表現してみるつもりです。
         二人の長い対決に、より深みを与えるためにも。
      http://www.nikikai.net/enjoy/walkure/001.html

演出家の印象的なコンセプトとしては、歌詞に歌われているものを、一度全て
ビジュアル化してみたいという願望だろう。我々もかつて、バレンボイムの
チクルス公演の際、この「糸つむぎの部屋」で、「ラインの黄金」に出づっぱり
のローゲが、翌「ワルキューレ」でウォータンに呼ばれても姿を現さないこと
への奇異の念を表明した。当然姿を現しても可笑しくない3幕の大詰めに、
とうとう「ローゲ」がパントマイムで姿を現してくれた。

ローゲの登場は、解説書にも明記されたので、歌詞に歌われているものを、
一度全て、ビジュアル化してみせる試みの第1号だったのだろう。

いつか実現の日を期待していた素人としては、ご満悦にならざるを得なかったし、
最後にカーテンコールに加わった、演出家にブラボーを贈った次第である。

歌われているものを、一度全て、ビジュアル化してみせる試みの第2号は、
ウォータンがブリュンヒルデは母エルダとの愛の結晶であること、出自を語る
第二幕の場面である。

この語りをビジュアル化したのが、子供時代のブリュンヒルデの登場であった。

素人の当方としては、以前、「糸つむぎの部屋」で話題にした頃は、産着に
くるまれた赤ちゃんを想定していたのだが、このウォータン語りの間に、
ともかく地底のエルダの園と思しき風景が出現したことは、またまた、内心拍手、
我が意を得たりであった。

子供時代のブリュンヒルデとしては、第一幕の前奏部、第三幕のウォータンの
告別の回想場面にも使われ、特に後者は聴衆の涙を誘うアイテムとなっていた。

歌われているものを、一度全て、ビジュアル化してみせる試みの第3号は、ご存知
の三幕「ワルキューレの騎行」における戦いの場の再現であろう。源平盛衰記の
様な戦いの場面のスローモーションは、快速で走る音楽との対比が絶妙であった。

試みの第3号だけは、私の予想外であったが、ワルキューレ達が、実際に敗れた
戦士の二人の名前を口にするだけにリアルな再現で統一された、演出家のコン
セプトに狂いはなく、賛辞を贈るものである。

日本人による「ワルキューレ」としてまずまずの陣容と出来栄えだったが、
バイロイト連続出演のベテラン小山由美を除けば、女性陣は、世代交代の時期に
差しかかっており、若干個性に欠けていた。男性は、ジークムント、フンディンク
、ウォータン共、粒より。

第一幕のワーグナーの毒と称される場面では、むしろ1972年公演が今でも
一番と解説にもある様に、当時、辛口「宇野功芳氏」も絶賛したジークリンデ
のエロチシズムの発散が、今公演では、皆無になってしまったのは、本演出の
最大の弱点であろう。

トーキョーリングは、このような、きわどい場面では、常套ではあるが、
太ももをあらわにするとか、しっかりはずさなかった筈である。まだまだ、
あるが紙面の関係で、割愛する次第である。

では、この辺で
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